「窓花/中国の切り紙―黄土高原・暮らしの造形」

会期:2013年10月18日(金)―2014年1月28日(火)
会場:福岡アジア美術館アジアギャラリーB

主催:福岡アジア美術館
*休館日・アクセス等は美術館サイトをご覧ください。
http://faam.city.fukuoka.lg.jp/

 

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A室 「なんと、全部ハサミで切る!」

    -黄土高原の「窓花」と出会う-

黄土高原の山肌を掘った土の家、ヤオトン。

その正面の格子窓は、動物から暮らしの風景まで、さまざまな図柄の真っ赤な切り紙細工、「窓花」で彩られます。

ハサミだけで切り出される多様なかたちは、吉祥や魔除けの意味をもつといわれ、文字を読み書きできない女性達は、家族や恋人への想いや願いを、窓花のかたちに託します。

 

「窓花」は、農婦たちが農閑期に楽しむ正月飾り。生きた花が枯れた種を宿すように、窓に咲く紙の花はめぐる季節のうちに色あせ破れる運命にあります。女性達は年毎に古い切り紙を型紙にして重ねて切ることで、遠い昔のかたちに新たな命を吹き込みます――

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B室 「紙の衣で、ご先祖さまも冬支度」

    -この世とあの世をつなぐ紙の花-

ご先祖様に贈る紙でつくった寒衣。靴も布団もある!
ご先祖様に贈る紙でつくった寒衣。靴も布団もある!

「紙花」は、陝北の葬礼であの世へと向かう魂に奉げられる紙の花。

 

中国では、人は地上の「陽界」に生き、死ぬと霊魂となって地下の「陰界」へと移り、そこでまた現世と同じように暮らしていくと考えます。

ヤオトンの前庭に設えられた祭壇には、色とりどりの花輪から、車や家、馬に洗濯機、金銀財宝まで、ありとあらゆる品物が紙でつくられ、供えられます。これら紙で作った生活必需品は、親類達の葬列でお棺とともにお墓まで運ばれ、埋葬後に墓の上で燃やされて、炎と煙と化すことであの世へと移動します。

 

春節や旧暦十月一日の衣替えの季節には、食品や生活道具などに交じって町の市に、あの世の人びとに贈る冬服「寒衣」や天国銀行発行の「紙銭」が並びます。春節に家々の門に貼る赤い春聯もまた、隣人や神々に伝える吉祥の言葉や新年の願いが記されるメッセージカードとも言えるものです。

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C室 「ここに、なくてはならない花」

    -日常と幻想が溶け合う、ヤオトンの空間-

万難を排す女神、「抓髻娃娃(ジュワジーワーワ)」はSARSの時にも室内に貼られたという
万難を排す女神、「抓髻娃娃(ジュワジーワーワ)」はSARSの時にも室内に貼られたという

夏涼しく冬暖かい土の家、ヤオトンには、ミズノ希少さや凍てつく冬の寒さを乗り越えるための、暮らしの知恵が詰まっています。

オンドル式の寝床「炕(カン)」は、かまどで炊いた火の熱で温まる仕組み。朝晩の食事から針仕事、ご近所さんの井戸端会議までヤオトンの日常は、「カン」を中心に営まれます。

 

ヤオトンの高いアーチ形の丸天井や壁は、窓から差し込む陽光を受けて、優美な格子とユニークな窓花を映し出すスクリーンのよう。日常の暮らしから神話の世界や伝説上の魔物まで、切り手の女性達が繰り出すかたちの数々が、薄暗いヤオトン空間に浮かび上がります。

 

女性達は病気や困り事があると、人形(ひとがた)の切り紙を切って壁にぺたっと貼りつけます。山のなかに抱かれた穴居に貼られる切り紙は、天の神や地下に住む霊魂との通信手段。このように日常と幻想が融け合うヤオトン空間のなかで、窓花は脈々と生き続けてきたのです。

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